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KCON WALKER

コンクリートの起源から構造物築造の変遷 Vol.05

こんにちは!

弊社の顧問執筆によるコンクリートについてのいろいろなお話が新しくスタートします。
おもしろいのでぜひご覧ください。

 

18、湊川隧道
湊川隧道は天井川であった湊川の付け替えを行ったもので、隧道延長603m、幅7.3m、高さ7.6mで、この断面は当時としては世界最大級で1901年明治34(1901)年3月竣工している。写真44、45に隧道入り口並びに内部を示し、図-2に隧道断面を示した。
新湊川は流域面積約30平方km、幹線水路延長10.2kmの兵庫県が管理する2級河川で、20世紀になり新たに生まれた河川である。旧湊川は典型的な天丼川で堤防の天端は平地より6mも高く、東西の運輸交通の妨げとなっていた。また、普段の流量は少ないが、大雨で大量の土砂も一気に流れ、ときに氾濫して地域住民を苦しめた。
流出土砂による神戸港埋没のおそれや度重なる旧湊川の氾濫、および天丼川の旧湊川が東西交通の障害となっていたことで付け替えが議論されるようになった。
明治34(1901)年に竣工したこの湊川付替え工事は、同時期に行われた烏原貯水池立ケ畑堰堤や奥平野浄水場等の神戸水道事業、兵庫運河開削の港湾事業と並び、神戸における明治期の三大土木事業といわれている。


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写真-44湊川隧道入口


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写真-45湊川隧道内部


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図-2 湊川隧道の断面


湊川隧道の設計は瀧川釧二・工学士と思われ、施工は大倉土木(現在の大成建設の前身)が行った。地質は大阪層群の砂礫・砂。粘土の互層で構成された未固結地山で、掘削はツルハシやノミなどを使用した手掘り作業で行われたと思われる。
銘板には起工、竣工の時期、 トンネルの規模などが書いてある。なお、長さは昭和初期の神戸電鉄の建設で、上流側へ66m延長されている。


19、日本での最初の鉄骨コンクリート橋・鉄筋コンクリート橋
琵琶湖疏水に架かる第11号橋(写真-46)は鉄骨コンクリート橋で、明治36(1903)年に建設され、写真-47に示す日本最初の鉄筋コンクリート橋は同じく琵琶湖疏水に架かる山の谷橋(黒岩橋)で、翌年の明治37 (1904) 年に建設された。
これらの橋の手摺などはあと施工であるが、本橋は当時のまま使用されており、写真-48の第11号橋の下面には炭酸カルシウムによるつららが見られた。


20、函館どつく㈱函館造船所
函館造船所は明治29年(1896)年、津軽海峡に臨む北海道函館の地に「函館船渠株式会社」として創業された。造船所の土留め壁面はコンクリートブロックを積み上げた構造となっており2005年3月、日本学術振興会が100年前のコンクリートを調査するとあって同行した。


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写真-46 疏水に掛かる第11号橋(鉄骨コンクリート橋)


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写真-47 疏水に掛かる橋・山の谷橋(黒岩橋)
(日本最初の鉄筋コンクリート橋)


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写真-48 第11号橋下面のつらら


函館ドックは明治31(1898)年着工、明治36(1903)年完成で、壁面ブロックの内部からコンクリートコアが採取されたとき、その緻密さから先人達のご苦労を伺うことができた。写真49はドック全景で、写真-50は函館どつく㈱函館造船所にて所有されている貴重な写真集より画像を拝借したもので、当時のコンクリートブロックの製造風景を描き出している。写真-51はコンクリートの粗々しい練り上がり状態が伺え、振動機のなかった時代にこの配合のコンクリートを打込み、木蛸で突固め、上昇する水分を布で吸い取り、打継ぐという作業を繰り返し、ストックヤードに置いてある美しい製品が生まれたのであろう。写真-52は採取した約110年前のコアである。


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写真-49 函館どつく


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写真-50 土留めブロックの製造


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写真-51 練り上ったコンクリート


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写真-52 採取されたコア


21、函館漁港船入場石積み防波堤
函館港は横浜・長崎とともに貿易港として開港され、古くから本州と北海道を結ぶ交通の要衝として発展を遂げている。
写真-53に函館港を示し、写真-54、55は石積防波堤全景を映している。築港工事は明治29(1896)年に廣井勇博士の指導のもとに着工され、構造形式は捨石提であるが、提体前面および背後の一部にブロックを置き、上部の基礎としている。このブロックは施工中の割石の散乱を防ぐ目的も兼ねており、コンクリートの配合は容積配合で、セメント1:砂2:砂利2:割石2の割合になっている。


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写真-53 函館港石積み防波堤


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写真-54 石積防波堤全景


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写真-55 石積防波堤改築前


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写真-56 石積防波堤改築中


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写真-57 引き上げられたブロック


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写真-58 中性化測定


表2 海中から引き上げられたコンクリートブロックのデータ
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上部工は一部破損している場所もあるが、基礎に用いたブロックに付いてはほとんど変化が見られない。2012年7月現在、写真-56に示す上部の劣化した部分を修復し、昔の姿によみがえろうとしている。
そして、事務所前には写真-57の海中から引き上げられたコンクリートブロックが静置されており、人の姿からして大きいものであることがわかる。写真-58にはコア採取され、中性化深さ測定のためにフェノールフタレインが塗布され、赤色に変化していた。表2には北海道開発局・函館開発建設部・函館港湾建設事務所に置いてあった資料から中性化が2.5mmと小さく、密実に築造されたことを意味している。


参考文献
コンクリート材料工法ハンドブック
セメント産業における非エネルギー起源二酸化炭素対策に関する調査
コンクリートの長期耐久性・小樽港100年耐久性試験に学ぶ
 土木学会・第一大戸川橋の概要335委員会成果報告書
 雑誌:コンクリート工学
 神戸市水道局パンフレット
 湊川隧道保存友の会パンフレット
 建設業界⑩⑪ volume 52、2003
 土木学会誌 1992年11月号 北の国からの大いなる遺産
 その他インターネットより