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KCON WALKER

コンクリートの起源から構造物築造の変遷 Vol.10

こんにちは!

弊社の顧問執筆によるコンクリートについてのいろいろなお話が新しくスタートします。
おもしろいのでぜひご覧ください。

 

29、生コンクリートの誕生
草創期の生コンクリートの製造工場は磐城セメント㈱(現、住友大阪セメント)が全額出資で設立し、東京コンクリート工業㈱が東京都墨田区押上町7番地の東武鉄道業平橋駅構内に昭和24年11月、業平橋工場を建設したことに始りまる。現在東京スカイツリーがそびえる近くで日本最初の生コン工場は昭和24年11月15日操業を開始した。
最初の生コン出荷日を記念し、11月15日を「生コン記念日」として制定されている。写真-84に東京コンクリート工業㈱の会社と写真-85には当時の運搬車を示した。


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写真-84 東京コンクリート工業㈱


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写真-85 当時の運搬車


30、信楽高原鉄道第一大戸川橋梁
写真-86に示すPC桁は昭和29(1954)年に旧国鉄により架設されたわが国初の本格的ポストテンションPC桁鉄道橋スパン30mで、日本はおろか、鉄道橋としては世界的にもほとんど例が無かった。設計・施工は当時、国鉄大阪工事事務所次長の仁杉巖博士(後の国鉄総裁)(写真-87)らが、吉田徳次郎博士らの指導を受け施工した。
昭和29年5月8日着工 昭和29年8月26日竣工{施工:㈱森本組}
設計基準強度:450kgf/cm2、
プレストレス導入時:420 kgf/cm2、
スランプ:2cm
単位セメント量:430kg、
表-5に配合表を示した。桁1本20m3で、水セメント比36%の粗々しいコンクリートを、1本目、11時間で打ち込み、2本目からは7時間半で打ち込んでいる。
湿潤養生を行うことにより、内部温度の上昇を抑えた。外気温度は20℃、コンクリート打設後12~14時間で水和熱による温度はピークに達し、48℃を記録した。
打設後早期に型枠脱型を行い、湿打設後7日間は湿潤養生とし、53年経過後の中性化は写真-88に示すように表面のみとなっている。


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写真-86 信楽高原鉄道
長さ30mポストテンション桁


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写真-87 仁杉 巌 博士
(2002/05/31)
土木学会交流会にて


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写真-88 試験片の中性化深さ


表-5 PC桁鉄道橋のコンクリート配合表
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表-6 各構造物の中性化深さ
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31、中性化の進行
函館漁港や小樽港に使用されたコンクリートブロック、さらに、戦時中に築造されたコンクリート船武智丸、信楽高原鉄道第一大戸川橋梁PC桁等の中性化深さを表-6に示した。どれも使用された条件は異なるが、長年の過酷な条件にも耐えている。水セメント比が40%以下になると中性化しないという記事を読んだことがあるが実際にそのようになっていることが判る。

 

32、おわりに
 往時のセメント粒子単体は現在のものより数倍大きく、水との反応が遅いことから強度発現も遅く、W/Cを小さくしないと所定の強度を得ることが出来なかった。すなわち、1900年代におけるセメントの粉末度は約1000cm2/gであったが、粉末度を大きくすることで早期強度の発現を可能にした。現在の普通ポルトランドセメントの粉末度は約3300cm2/gである。又、石膏を混入する技術が確立されたことから偽凝結の心配がなくなり、打設しやすいコンクリートへと変ってきた。
 往時のコンクリート構造物を調べるとその時々に多大なご苦労があって現在があることがよく解る。
 コンクリートは方円の器に随う。すなわち、方円の器を造るのは人間で、器の造り方、打設の仕方により見栄えも性能も大きく変わってくる。無名碑であっても入念に施工し、長期持続可能なコンクリート構造物を築造して頂きたいと思う。

 


参考文献
コンクリート材料工法ハンドブック
セメント産業における非エネルギー起源二酸化炭素対策に関する調査
コンクリートの長期耐久性・小樽港100年耐久性試験に学ぶ
 土木学会・第一大戸川橋の概要335委員会成果報告書
 雑誌:コンクリート工学
 神戸市水道局パンフレット
 湊川隧道保存友の会パンフレット
 建設業界⑩⑪ volume 52、2003
 土木学会誌 1992年11月号 北の国からの大いなる遺産
 その他インターネットより