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KCON WALKER

コンクリートの起源から構造物築造の変遷 Vol.01

こんにちは!

弊社の顧問執筆によるコンクリートについてのいろいろなお話が新しくスタートします。
おもしろいのでぜひご覧ください。
 

『コンクリートの起源から構造物築造の変遷』
平成24年7月17日
顧問 長谷川光弘


1、はじめに
コンクリートの歴史は思ったより古く、又、現在のような打設しやすいコンクリートになるまで長い年月がかかっている。ローマ時代にはすばらしい技術が構築されていたが、世のニーズに答えられず、細々としか継承されなかった技術が現在のコンクリートの基礎となっている。煉瓦や石材からコンクリートに変化して行く様子を往時の構造物から見ることにした。
世の中にはより立派な築造物が他に多くあるとは思うが、自分の目で見てきたもの、また、興味を持った構造物を抽出して記述した。


2、コンクリートの起源
コンクリートの起源は非常に古く、古代エジプト、ギリシャ、ローマ時代の石造建築物において、石材同士の接合に使われた。使用された材料は石こう、火山灰、石灰などを使用したモルタルが用いられていたと言われている。これらはいずれも石灰岩を焼成して出来た酸化カルシウム(CaO・生石灰)に多量の水を加えた消石灰が使用された。水酸化カルシウムは空気中の炭酸ガスと結合し、炭酸カルシウムに変化するもので、長期の気硬反応で硬化する気硬性セメントと呼ばれているものである。
これに対して、現在工業的に広く利用されている水硬性セメントの技術は、18世紀後半から19世紀前半にかけて英国を中心に発展した。
 また、1867年モニエ(仏)は金網で補強したモルタルのフランス特許を取った。この金属補強の考えは、その後1880年ケーネン(独)により、次いで1890年代後半アネビク(仏)により改善されて、現在の鉄筋コンクリートの基礎ができ上がった。
 コンクリートの起源として最も古いものは写真-1に示す約9000年前の新石器時代にイスラエル・ガラリア地方のイフタフという場所から発掘されたものとされ、セメントには石灰岩をベースに骨材として石灰石を砕いたものを用いていて、かなり少なめの水で練混ぜたものとされ、住居の壁と床に使用されていた模様だ。日本では縄文時代である。
 その他には約5000年前に中国西安付近の大地湾の住居跡にも使われたものが発掘されている。


3、ピラミッド
4900年前、エジプトのクフ王、息子のカフラ王、孫のメンクラ王のピラミッドの目地材にモルタルが使用されていた。これは石材の高さ調整用でもあったが、直射日光による温度差の激しい場所での石材の膨張・収縮繰返しによる緩衝材的な働きをしていたのではないかとの説もある。
 クフ王と息子のカフラ王のピラミッドは石灰岩を積み上げているが、内部は荷重に耐えられるように花崗岩では?、孫のメンクラ王のピラミッドは花崗岩で出来ていて、出入り口付近では花崗岩が風化し、鬼マサ化していた。ただし、内部の石材は不明である。
写真-2はクフ王のピラミッドで、写真-3は当時のピラミッド表面が再現されており、漆喰が塗布され美しかったらしい。写真-4は息子のカフラ王のピラミッドで頂上付近は築造当時の姿を残している。写真-5は石材と石材との間に目地材が使用されていた様子を伺うことが出来る。
 クフ王のピラミッドには石灰岩・230万個 (2.5 t~15 t/個)が 使用され、高さ146mであったが、現在では137mである。
 ピラミッド築造当時の表面は化粧版で覆われ大変美しい姿であったが、イスラム時代にモスク建設に大量の石材が必要となり、ピラミッドの表面石材を剥がして転用したとされる。また、クフ王のピラミッドの高さが低くなったのは風化によるものとアナウンスがあったが、モスク建設のために転用したのではないか?


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写真-1 イフタフのコンクリート


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写真-2 クフ王のピラミッド


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写真-3 往時のピラミッド表面


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写真-4 カフラ王のピラミッド


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写真-5 目地


 ここでピラミッドの表面に使用されていた石材は2次製品ではないか?との説がある。
ウクライナの科学者、ビクトール・グルホフスキーは、古代のセメント製造法を調べ、アルカリ活性剤を加えることを発見したと主張している。
ビクトールの研究に影響を受けたフランス人の化学エンジニア・ジョセフ・ダヴィドヴィッツは、古代セメントの結合構造であるジオポリマーの化学的構造を解明したとし、エジプトのピラミッドの外殻に使われている石灰岩の化粧石が、自然石を切り出したものではなく、ジオポリマー石灰石コンクリートの一種である人造石で造られたとする説を発表した。
 ピラミッド内部の荷重を受ける部分に使われている石材は、石切り場から切り出して運ばれた天然石の花崗岩であり、石灰岩の化粧石とは材質が異なるにもかかわらず、あたかもピラミッドの全てがコンクリート製であるかのような、錯覚を与える記述をしているサイトが散見されるので注意を要する。
 2010年5月21日、日本のフジテレビ系で放送された娯楽番組『金曜プレステージ』でこの説の検証が紹介された。これは、ピラミッドの石切場で採取した石を砕き植物灰などと混ぜて古代セメント製のコンクリートブロックを作り、ピラミッドの石と成分などを比べて調べるという実験が、山口大学の池田攻名誉教授によって行われたものである。番組中、池田教授は自然石では見られない石膏とカリウムがピラミッドの石に含まれていることや、古代コンクリートの可能性がなくはないことに言及した。
 高句麗国の将軍塚などエジプトのピラミッドと共通の外観を持つ石積み古墳や、同様の大陸式山城の石組みを用いた日本の神籠石と呼ばれる巨石によって築かれた山城にも、ピラミッドの石を製造したのと同じジオポリマ-技術が使われていることが、顕微鏡を用いた分析からも確認されている。失われた古代技術がシルクロードによって極東まで伝えられた痕跡が認められる。・・・とあり、不思議な話である。
石灰岩(せっかいがん)は、炭酸カルシウム(CaCO3、方解石または霰石)を50%以上含む堆積岩。炭酸カルシウムの比率が高い場合は白色を呈するが、不純物により着色し、灰色や茶色、黒色の石灰岩もある。アラゴナイトは地上の雰囲気下では徐々に方解石に変化(転移)するので、一般的な石灰岩は方解石型である。石灰岩が地下で熱変成作用を受けて炭酸カルシウムが再結晶し、方解石の結晶構造を成長させた岩石を結晶質石灰岩(大理石)と呼ぶ。大理石(マーブル)と花崗岩(御影石)は互いによく似ているが、大理石は堆積岩で、花崗岩は深成岩であるから生立ちは全く異なるものである。
セメントの化学成分を次に示す。セメント中に含まれるK(カリウム)やSO3(三酸化硫黄or無水硫酸)はセメントを構成する粘土によってもたらされる。
粘土の主成分はカオリナイト(カオリン)で、主成分がシリカ(二酸化珪素SiO2)、アルミナ(Al203)、水(H2O)であり、この三成分からできているカオリンは粘土の
もっとも純粋な物と考えられ、鉱物名としても用いられるようになった。池田攻名誉教授がおかしいと言われるのはここである。表-1にセメントの化学成分を記す。


表‐1 セメントの化学成分
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参考文献
コンクリート材料工法ハンドブック
セメント産業における非エネルギー起源二酸化炭素対策に関する調査
コンクリートの長期耐久性・小樽港100年耐久性試験に学ぶ
 土木学会・第一大戸川橋の概要335委員会成果報告書
 雑誌:コンクリート工学
 神戸市水道局パンフレット
 湊川隧道保存友の会パンフレット
 建設業界⑩⑪ volume 52、2003
 土木学会誌 1992年11月号 北の国からの大いなる遺産
 その他インターネットより